
『新劇場版 銀魂 -吉原大炎上-』日野 聡さん(神威役)インタビュー|16年の時を経て重ねる“神威の声”
日野さんが神威を通して感じる16年間の変化
──実際にアフレコをしてみて、16年前と今とで変化を感じる部分はありましたか?
日野:今作は前作と違い、“僕が声優として積み重ねてきたもの”が意識せずとも芝居に乗る乗ってしまったりもするので、どうしてもセリフの説得力は変わるだろうなと思っていました。ですから、当時の自分に近づけることを意識しつつも、“積み重ねの中で得た新たな芝居を見せる”というスタンスが一番正しいのかなと思い、アフレコに臨んでいましたね。
──今作のアフレコは2025年の秋に放送されたTVアニメ『3年Z組銀八先生』のアフレコよりも後だったと聞きました。『銀魂』と、『銀八先生』では、神威の声に違いを感じますか?
日野:大きくは変わりませんが、ちょっと違いますね。『銀八先生』の場合、神威は不良として出てくるので最初からそのスタンスで演じているのですが、『銀魂』では先程言ったようによりお茶目で可愛らしい部分も垣間見えるので。
今作のアフレコでもそのあたりを意識しつつ、16年前の「吉原炎上篇」を見返したうえで神威を表現したつもりだったのですが……最初の台詞時にスタッフさんから「ちょっと渋いね!」と言われてしまい(笑)。現場では、しばらく声の調整をやらせてもらってから収録しました。
──ともあれ、それ以降はスムーズに。
日野:そうですね。音響監督からのオーダーも特になく録っていきました。
──では、今作に限らず、神威を演じるうえで当初から大切にしていることは何ですか?
日野:“飄々とした狂気”でしょうか。笑顔ですごいことを言っているという、表情と発言が乖離している感じは一番大切にしています。また、“いなす”ようなニュアンスも意識して演じてきましたね。
神威が本気を出すのは銀魂本編の作中でも終盤に入ってからなので、この時期の神威はまだ全力を出していないと個人的には解釈しています。「鳳仙との力の差はどのくらいあるのか」「侍という面白い武人を発見した」という強さへの探究心や、「あの鳳仙を腑抜けにした日輪とはどんな人物なのか」という興味のほうが強いと思うんですよ。
なので、強者と真っ向から向き合うのではなく、サラッとはぐらかすような感じも必要だなと思っていました。
──それこそ、16年前に観た「吉原炎上篇」の神威は、前情報なしに観たとしてもわかるであろう、圧倒的な存在感がありました。声からも狂気を感じたというか。日野さんのこういったお芝居があってこそだったのですね。
日野:でも、当時の自分にはそこまでの技術力がなかったと思うので、どこまで意識してやれていたのだろうか、と思いますけどね。ただただ神威を理解しようと思い、その場で出たものをがむしゃらに表現していたのだと思います。
今は逆に、「当時の自分がやっていたこと」と「今の自分ができること」の間でどれだけバランスを取れるかも考えながら演じました。経験や年齢を重ねたからこそできたことなのかなと思います。
──同じシーン、同じセリフを16年ぶりに演じられたからこそ感じられる感覚ですね。
日野:特別意識していたわけではないですけどね。ふとした瞬間に「あ、できるようになってるな」と思うことはあります。あと、自分で気づけなくてもお客さんの感想を聞いたときに気づくことがあります。「できるようになったんだ!」と。
──今作の反響も楽しみですね。
日野:そうですね。公開はこれからですが(※取材時)、「あの当時の神威のままだ」と言ってもらえたら嬉しいです。「神威、老けたね」と言われたら「ごめんね……!」なんですけどね(笑)。
──また、音響監督からのオーダーはなかったとのことですが、現場で話し合ったことなどはありますか? 神威を長年演じ続けてきた日野さんだからこそ、提案できることもあるのかもしれないなと思いまして。
日野:自分もそうなんですが、きっとお客さんの中でも、神威と言えば!という象徴的なセリフがあって。ただ、今作では違う言い回しに変わっていて。個人的に神威っぽくないなと感じたんですね。なので、テストで以前のセリフに切り替えてみたんです。そうしたら、審議の上「日野さんが言ったほうにしましょう」と、採用していただきました。
──どんなセリフでしょうか……?
日野:「死ぬよ」を「殺しちゃうぞ」に変えました。この僕の判断が正解なのかどうか、自分自身では判別できませんが、神威をやり続けているからこそできたことだと思います。
──そのほかにも、今作のアフレコ現場での思い出を教えてください。
日野:楽しかったことでいうと、またこの銀魂の現場で!銀魂の役で!みなさんがマイクの前で掛け合っているのを見られたこと、ですね。シリアスもギャグも全部ひっくるめてどのシーンも楽しかった。
新劇場版公開で神威に言いたいことは「おかえり」
──2021年に公開された『銀魂 THE FINAL』で、アニメシリーズがついに完結。新作はもう作られないだろうと思われていましたが、今作で蘇りました。ここまで“終わる終わる詐欺”が続くと、銀魂ファンのみなさんも「もう終わらないのだろう」と思っているのではないかと。
日野:確かに。『THE FINAL』公開後、過去のエピソードを再編集して劇場公開していたので(※「銀魂オンシアター」)、「いつか新作が来るかもしれないな」という気持ちはちょっとありました(笑)。
──なので、日野さんが映画化してほしい長編を伺いたいです。
日野:個人的には、今作のように神威が出てくる長編は観てみたいですが、なかでも「将軍暗殺篇」「烙陽決戦篇」は、共闘する展開などもあってすごく熱いじゃないですか。
──確かに。ここまでのエピソードが贅沢な伏線だったんじゃないかと思えるくらいの展開でしたね。
日野:そんなエピソードを劇場の大スクリーンで観られたら、より一層銀魂ファンの皆様が喜んでくれるかと。
確か、今回のアフレコ現場でもそんな話になったんです。「もうこのまま、全部劇場版にしたらいいですよね」って。で、「そうしたら何年かかるんだろう? 10年かな? 20年かな?」と。
──楽しそうな現場ですね(笑)。では、「吉原大炎上」の神威に向けて言葉をかけるとしたら、どんなことを言いたいですか?
日野:なんでしょうね? 「おかえり」かなぁ。「たぶん、ここから長くなるよ」と(笑)。
──本当ですね(笑)。帰ってきたからには。
日野:ははっ! それこそ何十年も続けられそうですからね。
──日野さんが神威役になって16年経ちましたが、日野さんから見て神威の魅力とは何だと思いますか?
日野:また個人的な解釈になりますが……神威の根幹にあるものは、やはり家族だと思うんです。彼の強さの源にあるものも、もちろん家族。自分が弱かったから母が……という思いはきっと彼の中でずっと残っていて、父を憎みながら自分の弱さも責めて「もっと強くなりたい」と強さを追い求めてきた。「弱い奴に用はない」というセリフも、そういう思いから来ているのだと思います。
だから、結局のところ家族は大事に思っているんですよね。神楽のことを命まで取ろうとはしないし、銀さんに対しては“神楽の面倒を見てくれている地球のお兄ちゃん”みたいな扱いをしますから。
銀さんのことは、自分がなれなかった理想の兄貴だと思って見ているのかもしれません。半分くらいは信頼して預けているんじゃないかなと。勝手な解釈ですけれどね。そういうところに、神威の魅力を感じています。











































