ぼくらの人生を変えたアニメ11選【2020年編】｜『ひぐらしのなく頃に業』懐かしいけど新しくて、切ないけど楽しい、あの『ひぐらし』の世界が帰ってきた

当時は叶わなかった、ファン同士の“祭り”に参加できる楽しさ

また物語の前半は、「鬼騙し編」なら「鬼隠し編」、「綿騙し編」なら「綿流し編」といったように、旧作のエピソードをベースとしたものだったが、後半からは「祭囃し編」で一度運命を打ち破ったはずの梨花が、再び惨劇のループに囚われていることが判明し、オリジナルエピソードとなる「猫騙し編」がスタートすると、さらに盛り上がりは加速していく。

中でも話題を集めたのが、１話の間に梨花が４回も殺されてしまう第15話。この回では原作の最終エピソードである「祭囃し編」で、梨花の運命を打ち破るためのもっとも重要な存在である赤坂が登場し、綿流しの日まで梨花を守ることを約束する惨劇回避フラグを立てるのだが、その直後に赤坂が雛見沢症候群を発症して梨花を殺害してしまうというまさかの展開にファンは呆然。

赤坂は梨花の運命を打破するためのもっとも重要な存在であり、その希望が打ち砕かれるというだけでも十分ショッキングなのだが、さらなる追い打ちとして「祭囃し編」屈指の名シーンで赤坂が口にする「梨花ちゃん、君を助けに来た！」の台詞まで使われるエゲつなさで、旧作を知っていればいるほど絶望が強くなる。

こうしたファン心理を巧みについた展開がこれでもかと詰め込まれている。その後の「郷壊し編」からは、魅音の卒業後の分校、高校生になった梨花と沙都子、大学生になった圭一たちが登場したことも大きな話題となった。

このあたりまで来ると、「祭囃し編」までの旧作の流れを把握しているのが前提になってくるため、「新規ファンがついてくるのは大変だろうな」という心苦しさを感じつつも、その先の物語が見たいと感じていた長年のファンとしてはたまらない。

ただ同時に、まさに理想のエンディングとして完結した『祭囃し編』のあとに、再び惨劇が起きてしまうのは、複雑な感情もあるのが正直なところでもある。

しかしそれ以上に、もう一度『ひぐらし』の世界に触れ、他のファン達と一緒に盛り上がれるのは、その感情を遥かに凌駕する喜びがあった。筆者の場合、冒頭でも触れた『ひぐらし』がヒットした要因一つである、推理・考察合戦という“お祭り”に最終盤でしか参加できなかったが、今回はようやくそれが叶ったことになる。

また『ひぐらし』は昭和を舞台とした作品だが、作中に登場する喫茶店であるエンジェルモートが、2000年代にブームとなったメイド喫茶を明らかに意識していたり、“萌え”という今では懐かしさを感じる単語が何度も登場するなど、平成の文化が作中にも盛り込まれている。『業』でもその片鱗はいくつか残っており、令和になった今その世界に触れることで、昭和と平成、２重のノスタルジーが感じられるようになっているのも面白いところだ。

この原稿を執筆している時点では、そんな『業』もまもなくクライマックスに差し掛かっているが、まだまだその熱は冷める気配はなく、ますます盛り上がりを続けている。まだ本作は放送中の作品ということもあって、お祭りに参加するのは今からでも遅くない。

特に、昔『ひぐらし』が好きだったという方には、是非とも本作を視聴し、部活メンバーと再会する懐かしさに浸りつつ、共に惨劇を乗り越えて欲しい。