
濃密に作品と関わることができた6年。引き続き走り抜けていきたいーー『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』我妻善逸役・下野紘さんインタビュー
獪岳との対峙、善逸の新たな一面【ネタバレあり】
ーー我妻善逸は兄弟子の獪岳と対峙します。獪岳の最初の出番は「竈門炭治郎 立志編」の第十七話でした(善逸の兄弟子として)。あらためて対峙した兄弟子の獪岳の印象をお聞かせください。
下野:獪岳は「竈門炭治郎 立志編」のときに兄弟子として回想シーンに登場したとき、善逸にずっと侮蔑の言葉を投げつけていて、本当に嫌なやつなのだなと思っていました。そのころは、特別な思い入れも持てないキャラクターだと感じていました。
ですが、今作で、善逸からすると尊敬するところがあり、彼も頑張っていたとキャラクターたちに教えてもらえたような感覚がありました。善逸は獪岳のことが苦手で、嫌いと言っていましたが、その反面、きっと憧れてもいて。善逸たちと同じように、彼は鬼を倒すために雷の呼吸を極めようとしていた、いろいろな努力をしてきた人でもあると思ったんです。
ーーギャグシーンがない善逸というのは演じてみていかがでしたか?
下野:第一章に関してはむしろあってほしくないとすら思っていました(笑)。僕としては獪岳との戦いやじいちゃんの想いに集中したかったんです。
ーー獪岳役の細谷佳正さんとお話されましたか?
下野:収録する前から決めていたのですが、対峙するからには喋らないようにしようと。ですが、まったく話さないのも変ですし、「下野さん、緊張感すごいっすね」と言われて、「この戦いはすごい気合を入れていて〜」などと話しましたが、それでもいい意味で話しづらい空気感はありました。僕は静かすぎる空間が得意ではなく、いつも話をしてしまうのですが、それでも今回だけはその気にはなりませんでした。

雷の呼吸 漆ノ型 火雷神に込めた想い【ネタバレあり】
ーー我妻善逸は、独自に編み出した雷の呼吸の漆ノ型・火雷神を放ちます。この技は本作で初お披露目となりましたが、どのように表現しようとお考えでしたか。このシーンに込めた思いをお聞かせください。
下野:収録前に何度も、何度も、原作の漫画を読んだんです。そしてずっとどういう表現をしたら良いのだろうといろいろなパターンを考えました。
そのパターンから、スタッフのみなさんが一番合うものを選んでくださったのですが、自分が「これだろうな」と一番思っていたバージョンを使ってもらえて。自分の考えは、間違っていなかったのかなと思いました。
ーー漆ノ型 火雷神は善逸のオリジナル技ということで想いも強かったのでは?
下野:最初に原作を読んだ時は思いませんでしたが、何回も読み返すうちに、善逸は強くなった自分を獪岳に見てもらいたかったんだろうなって思えてきて。加えて、火雷神を放つ前の獪岳のやり取りや直前までも、善逸の複雑な心情を感じながら演じさせていただきました。
ーー鬼になることを選んだ、獪岳の選択を、下野さんはどのように受け止めましたか。
下野:獪岳が言っていた言葉――「生きてさえいれば いつか勝てる」という考え方は、決して悪くない考え方だと思いますが、獪岳の「勝てる」という言葉には自分ひとりのことしか入っていないんですよね。彼は私利私欲のために、勝とうとしている。それが僕は引っかかっていて。
彼が家族や友人、恋人と一緒に生きて、一緒に勝とうとしていれば、鬼にはならなかったのではないかと思うんです。そして、本当は彼のまわりにも、人がいたはずなんです。鬼殺隊に入って雷の呼吸を学んでいたときにも、まわりに人がいたはずなのに、彼は自分のためだけに行動してしまったのかなと感じて。獪岳と善逸が雷の呼吸の継承者になって、一緒に輝くときが来るはずだったのに。最後の最後まで自分を顧みることができなかったのかなと思います。

[インタビュー・撮影/MoA]
インタビューバックナンバー
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』作品情報
あらすじ
入隊後、仲間である我妻善逸、嘴平伊之助と共に様々な鬼と戦い、成長しながら友情や絆を深めていく。
そして炭治郎は《鬼殺隊》最高位の剣士である《柱》と共に戦い、
「無限列車」では炎柱・煉󠄁獄杏寿郎、「遊郭」では音柱・宇髄天元、
「刀鍛冶の里」では、霞柱・時透無一郎、恋柱・甘露寺蜜璃と共に激闘を繰り広げていった。
その後、来たる鬼との決戦に備えて、隊士たちと共に《柱》による合同強化訓練《柱稽古》に挑んでいる最中、
《鬼殺隊》の本部である産屋敷邸に現れた鬼舞辻󠄀無惨。お館様の危機に駆けつけた《柱》たちと炭治郎であったが、
無惨の手によって謎の空間へと落とされてしまう。
炭治郎たちが落下した先、それは鬼の根城≪無限城≫―
”鬼殺隊”と”鬼”の最終決戦の火蓋が切って落とされる。
キャスト
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable










































