
魂をぶつかり合わせ、重ね合わせてきた“胡蝶しのぶ”を演じる覚悟――『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』胡蝶しのぶ役・早見沙織さんインタビュー
胡蝶しのぶは「お互いの魂をぶつかり合わせ、重ね合わせてきた存在」
ーー早見さんにとって、胡蝶しのぶはどんな存在になっていますか?
早見:胡蝶しのぶという人の心の根っこみたいなものに、近くで触れさせていただきながら、共に時間を歩んできたと思っています。少し抽象的な表現になりますが、お互いの魂をぶつかり合わせ、重ね合わせてきた存在です。
ーーそういう意味では、ご自身と胡蝶しのぶに共通する部分も感じられますか。
早見:どちらかと言うと、憧れるようなところがあります。しのぶさんは自分の中で、強い意志や燃えるような思いを持っている人ですよね。時に、隊士のみなさんや(竈門)炭治郎くんや(我妻)善逸くんにふざけて、からかうようなことを言ったり、少し意地悪なことをあえて言ったりしますが、この人の根本は真っ直ぐ。その強い意志に触れると、しのぶさんに影響されるというか、しのぶさんを演じている自分も、お腹の底から感情が湧き上がってくるような感覚があります。
ーーワールドツアー上映や海外へのイベントの出演など、海外のファンの方と触れ合う機会もあったと思います。
早見:ニコニコした表情で迎えてくださって、「本当に『鬼滅の刃』という作品が大好きなんだな」と伝わってきました。作品のお話をしている時は、食い入るように見つめながら聞いてくださいますし、作品をどれだけ大事にしてくださっているか、言葉の壁を越えて感じることができた気がします。
プレートや応援グッズなども持ちきれないくらい準備されていて、地域は関係ないのだなと。それはもちろん、現地に行ったからこそ、肌で感じられたことで。「『鬼滅の刃』を通して、世界中の人たちと繋がっているんだな」と思えたのは、すごく嬉しかったですね。
「鬼殺隊を辞めなさい」――胡蝶カナエの最期のことば【ネタバレあり】
ーー童磨との戦いで、しのぶはこれまで以上に感情をむき出しにしていますね。
早見:しのぶさんは姉が殺された時から、その思いをずっと絶やさずに、誰にも本当の思いを見せずに、ずっと内側で煮えたぎらせて、育ててきた人だと思います。そして今回、ついに最大の敵と出会います。しのぶさんはその瞬間をずっと思い描いて、人生を重ねてきたのだと思います。
遭遇した後、すぐに特徴が一致して、童磨と会った瞬間に、自分の全てのタガが外れているような表情もしています。言葉遣いも変わっていますし、そこでゆっくりギアを上げている場合ではないんです。「全然足りない」「もっとしのぶさんと一緒に培ってきた思いを奮い立たせるように向き合いたい」と思いました。
ーー最初は丁寧な言葉遣いだったしのぶが、だんだんと語気が荒くなっていきます。その言葉に至るまでの感情の流れを、演じるにあたってどのように組み立てていきましたか。
早見:今回はまっすぐに全身でぶつかっていくことを意識していました。いつもの穏やかに作り込もうとしているしのぶさんではなくて、童磨に対してスッとセリフが出てきました。
その中で、しのぶさんが姉さんに弱音を吐くシーンがありまして、実はそこが私の好きなシーンのひとつなんです。相手が姉さんだからそういうことを言えたのだろうし、しのぶさん自身が自分の限界を知っているからこそ言ってしまったのかなと思います。ですが、そのとき、姉さんが厳しいんですよね。これを言ったら、しのぶは立ち上がれる、と分かって言ってくれているのではないかと感じました。
ーーあのシーンに心を打たれる方は多いと思います。
早見:アフレコ収録時に、カナエ役の茅野(愛衣)さんとマイクを並べて一緒に録らせていただいたんです。収録での姉さんの言葉の芯の強さに驚いたところもありました。「こんなに強く言ってくれるんだ」「こんなにいい意味で厳しいんだ」と。それは想像していなかったところでした。
それだけしのぶさん自身も弱っていて、そんな弱っているところを姉さんにさらけ出してしまうぐらい切羽詰まっていたのだと思います。そのギリギリの状態に対して、あの強さで姉さんが言ってくれる。「この人の強さはここにあるんだな」と感じました。
ーー「無限城編」第一章では、胡蝶カナエの最期のことばを回想するシーンが描かれました。早見さんは、カナエの思いをどのように受け止められましたか。
早見:「しのぶ…鬼殺隊を辞めなさい 普通の女の子の幸せを手に入れてお婆さんになるまで生きて欲しいのよ…」と姉さんは言ってくれていて、幸せになってほしいと、長生きしてほしいと願ってくれている思いがひしひしと伝わってきました。
あくまで私個人の解釈ですが、その言葉の裏では、そう言っておかないと、いえ、そう言ったとしても、しのぶさんが自分の仇を追ってしまう人だと姉さんは分かっていたのではないかなと思うんです。だから、しのぶさんのことを理解した上で、それでもああいう言い方をしたんだろうなと思いました。
ーー本作を楽しみにしているファンのみなさんへメッセージをお願いします。
早見:いよいよ『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』が公開となりました。しのぶさんの思いを自分も全てとは言い切れないですが、その隣で一緒に感じながら、収録させていただきました。ぜひ劇場の大きなスクリーンで、いい音響で、楽しんでいただけると嬉しいです。
[インタビュー/宋莉淑 撮影/MoA]
インタビューバックナンバー
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』作品情報
あらすじ
入隊後、仲間である我妻善逸、嘴平伊之助と共に様々な鬼と戦い、成長しながら友情や絆を深めていく。
そして炭治郎は《鬼殺隊》最高位の剣士である《柱》と共に戦い、
「無限列車」では炎柱・煉󠄁獄杏寿郎、「遊郭」では音柱・宇髄天元、
「刀鍛冶の里」では、霞柱・時透無一郎、恋柱・甘露寺蜜璃と共に激闘を繰り広げていった。
その後、来たる鬼との決戦に備えて、隊士たちと共に《柱》による合同強化訓練《柱稽古》に挑んでいる最中、
《鬼殺隊》の本部である産屋敷邸に現れた鬼舞辻󠄀無惨。お館様の危機に駆けつけた《柱》たちと炭治郎であったが、
無惨の手によって謎の空間へと落とされてしまう。
炭治郎たちが落下した先、それは鬼の根城≪無限城≫―
”鬼殺隊”と”鬼”の最終決戦の火蓋が切って落とされる。
キャスト
(C)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable

















































