音楽
“かつてない西川貴教”とはなにか『炎炎ノ消防隊』第3期 主題歌インタビュー

次はあなたがヒーローになる番――『炎炎ノ消防隊 参ノ章』主題歌「Ignis -イグニス-」に込めた想いを西川貴教さんに聞く

 

89秒という制限があるからこそ、生まれるスピード感もある

──レコーディングで印象的だったことはありますか。

西川:とにかく展開が多い楽曲なので、短い中で場面がどんどん切り替わっていく。その一つ一つをどう歌い分けるかは、腕の見せどころでしたね。もしね、それこそ気に入ってカラオケで挑戦されるなら(笑)、かなり歌いがいはあると思いますよ。

──楽しい曲ですよね。でも同時に難しさもあるとは思います。こんなことをご本人に聞くのは申し訳ないのですが、歌うときに何かコツはあったりしますか……。

西川:コツ!?(笑)。そうっすなあ……。あ、でもぜひね、しっかり聴き込んでから歌ってほしいですね。「いけそう」と思うとすぐ自分の歌いかたになってしまうでしょ(笑)。もう一回、もう一回と聴いて、体に入れてから歌う。そこがポイントかもしれません。

──「Ignis -イグニス-」というタイトルは、西川さんご自身の発案だったのでしょうか。

西川:いえ、これはご提案いただいたものなんです。ただこの「Ignis」という響きをすっと受け取ってもらえるようにしたいと思って、カタカナ表記の「イグニス」を添えることはこちらから提案しました。

──西川さんのタイトルには、カタカナ表記がつくことが多い印象があります。

西川:そうそう。それは聞き慣れない言葉でも、一見して理解してもらいたいなと。それこそアニメの素晴らしさって子どもから大人まで幅広い層に届くところだと思うので、ラテン語が読めなくても、カタカナがついてれば「イグニス」とすぐに読める。その瞬間に楽曲の印象が伝わることは大事だと思いました。

──少し話題が変わりますが、アニメ主題歌の89秒というフォーマットについて、最近SNSでさまざまな意見が交わされていました。アニメサイズの尺の中で作品の世界観と楽曲としての完成度を両立させるために、西川さんが意識されていることはありますか?

西川:へえ、そういうことが話題になってたんだ。知らなかった。でも89秒という制限があるからこそ、生まれるスピード感もあると思うんですよ。サビまで辿り着くために自然とBPMが上がったり、構成を工夫したりと、アニメテーマソングならではのサウンドメイクがあって。まあ、なんていうのかな。「ここからここまで」と枠が示されて、その89秒という条件をどう使うか。その中でどんな自由なものづくりをするかを考えればいいんじゃないかなと思っていて。それを窮屈だと思ってしまいはじめると途端に足掛けに聞こえてしまうかもしれないけど、僕はむしろ「ここからここまでだよ」と言われている尺の中で「自由」に表現をすることを、僕は「自由なこと」と捉えています。そもそも「自由」ってなんでもやっていいわけではないですからね。決してそういう意見があることを否定をしているわけではなくて、僕にとっては「自由ってそういうことよ」って。もちろん作品によるから一言には言えないのですが……例えば、例えば映画の主題歌になるとロングスケールで描けますし、最初から楽曲を中心に据えて作品作りをされている場合はまったく関係ないタイミングで主題歌が入ってきたりしますしね。

 

「祖逖乃誓」(そてきのせい)に刻んだ覚悟

──カップリングの「祖逖乃誓」(そてきのせい)は、「Ignis -イグニス-」のスピード感とは対照的に、民族的な響きと重厚なミドルテンポが印象的です。このサウンドはどんなイメージから生まれたのでしょうか。

西川:そうですね。「Ignis -イグニス-」はとにかく勢いも情報量も多い楽曲ですから、その対比として、どっしり構えてじっくり聴いていただける楽曲がいいなと漠然と考えていました。コンペでさまざまな楽曲を聴く中で、引っかかったのがこの曲でした。

──スケール感のある、ダイナミックな一曲ですね。西川さんの決意も込められた曲となっています。

西川:さきほどおっしゃっていただいたように、言うてるまに、西川貴教名義の10年が見えてきて。まだまだ成し遂げられていないことばかりなのですが……自分としてはこれから向かう覚悟や信念を、ここで改めて刻みたいと思ったんです。2026年最初のシングルでもありますし、自分自身に向けた確認の意味も大きいですね。

今年僕自身がライフワークとしてやってきている、地元で続けてきたフェスの名称も新しくなり、さらに海外公演が今年一発目のライブになったりと、今年は大きな変化の年になりそうだなと感じています。だからこそ、今一度、自分の指針を楽曲として提示したいなと。

──歌詞を読み解いていくと、中国古典や仏教由来の言葉がいくつも登場します。“西川さんらしい座右の銘集”のようにも感じました。これは自然とこういう言葉に辿り着いたのでしょうか。

西川:まさに自分を構成している言葉がここにあります。今回の楽曲には、自分がこれまで心の支えにしてきた言葉をたくさん詰め込んでいます。これを聴いていただいたり、歌詞を読み解いていただければ、西川のひととなりも見えてくるんじゃないかなと思っています。タイトルは「これからも挑み続けるんだという覚悟」を表現した言葉を探していく中で、「勝つまで帰らない」という意味合いを持つ言葉「祖逖之誓」に出会って。それでつけさせてもらいました。

──私自身すごく詳しいわけではないのですが、孔子、老子の言葉は人生の指針になるようなものが多いですよね。

西川:そうですね。兵法などに通じるものもあって、それをそのまま現代に当てはめるのは簡単ではないですが、兎角、人間関係の本質は、ツールやメディアが変わっても変わらないと思うんです。残された論語をどう自分なりに読み解くか、というのも大事だと思うんですよね。「これが正解です」ではなく、「自分だったらこう解釈するんだけど」ってなることが、実はすごく大切な気がしています。

──感じたなら考えろ、という感覚と言いますか。

西川:今ってすぐに「ソースを出せ」「エビデンスは?」という話になりますよね。でも人間の感情って、そんなに単純に数値化できるものではない。心の機微があるわけじゃないですか。曖昧な部分をお互いに探りながら、「こうしたら嬉しいんじゃないか」「これは言わないほうがいいんじゃないか」と想像することが実は大事だと思うんです。SNSは短文で可視化する。それに注力することに危険性もある気がするし、だからこそ、見えてくる大事なものというのもあるんじゃないかと。

──西川さんご自身はSNSで発信される際に意識していることはありますか。

西川:言葉は選びますね。でも、面白いです。SNSはある意味リトマス試験紙みたいなものだと思っていて。返ってくる反応を見ることで「ああ、こう受け取られるんだな」と気づくことも多い。常に心がささくれている人も一定数いる。でもそこに僕が反応するのではなく、「そういう人もいるんだ」という前提で、自分は何に誠意を持って、真心を持ってどうやって尽くしていくかを考えることが大事なんだと思っています。目の前の反応に対して反射的に返すことはあまり意味がないと思っていて。そうではなく、自分自身への戒めとして吸収した上で、自分の発言をしていく。その姿勢が大切なんじゃないかなと。

──以前もお話を伺った際「人のために動くのが好きなのかもしれない」とおっしゃっていました。今日のお話からもそれを感じました。

西川:いやいや……なんかね、いやですね(笑)。講釈を垂れているみたいで恥ずかしいですね。「楽しんでください、ありがとうございます!」で良いとは思うんですよ。でも、先日の香港公演でも改めて感じたんですが、日本のアニメやコミック、カルチャーを本当に愛してくれている方が世界中にいる。でも一方で、この景色を見られていない方々のほうが圧倒的に多いわけじゃないですか。僕はありがたいことにそれを見る機会を比較的いただいている立場なので、なるべくそれを広げ、そういう景色を少しでもみんなに見てもらえるチャンスを作っていくというのも、僕の使命だと思っています。アニメやコミックが好き、というのが僕の軸ですが、せっかくならもっと、そこに付随する音楽も含めて、日本の音楽の素晴らしさをひとりでも多くの人に知ってもらえたら嬉しい。

──それこそ西川さんは『AnimeJapan』のアンバサダーなど、アニメ作品の発信の場にも積極的に携わられていますよね。

西川:アニメやコミックを含めた日本のコンテンツ全体に携わる立場として、橋渡し役になれたらと思っています。今は国としてもコンテンツを支援していこうという流れがありますが、クリエイターの皆さんは作品づくりに集中されている分、自分たちの魅力を言語化したり、プレゼンテーションしたりするのがなかなか難しいこともあると思うんです。それこそ楽曲制作って常に作品へのリスペクトから始めていますし、僕自身“ファン”の立場でもある。だからこそ「何が素晴らしいのか」「どこをどう届けるべきか」を、関係者の皆さんに伝える橋渡しができたらと思っています。そういったところで、今後便利に使っていただければいいな、と(笑)。

──アニメの主題歌も、まさに橋渡しの役割を担っていますよね。

西川:そう! テレビで言えば、直前までバラエティやニュースを観ていた方が、主題歌をきっかけに一気にアニメの世界観へ入っていくわけじゃないですか。その接続部分、インターフェースを担っているのが主題歌。だから、そういう役割を担う使命なんでしょう(笑)。


 

かつてない西川貴教とこれからの西川貴教

──「Ignis -イグニス-」の「かつてない西川貴教」というキャッチコピーもすごく印象的ですが、ご自身ではどのように感じていますか。

西川:30年、デビュー前を含めれば35年近くやっているわけですけど、それでもまだ自分の未知な部分に出会える感覚はあるんです。T.M.Revolutionのツアーを回っていても、「初めてライブに来ました」という方がいらっしゃる。これがやっぱり嬉しい。もし途中でやめていたら、その出会いはなかったわけですよね。それが続けることの意義のひとつだと思います。その一方で、西川貴教名義では新しい挑戦もさせてもらっている。本当に周りの方々に感謝しかないですね。

──「かつてない」は、これからも更新され続けるんだろうなと思っています。

西川:ですね、そうであってほしいですね。新しい西川貴教に触れていただいた方のなかには、そこからabingdon boys schoolやT.M.Revolutionを聴いてくれることもあるかもしれない。僕の中にはそれぞれの“デッキ”があって、来る相手や状況に応じて組み替えていく感覚なんです。アプローチを変えながら戦っていく、そんなイメージですね。

──初回生産限定盤には『イナズマロック フェス 2025』西川さんステージの映像も収録されています。

西川:名実ともに『イナズマロック フェス』の最後の映像になります。『FEST. INAZUMA』に名称は変わりますが、新しいスタートを切る今年のイベントに向けて、ひとつの区切りみたいなものもあります。

──ご覧になられてどのような想いになりましたか?

西川:この映像のなかに(Novelbrightの)沖くんとのステージが収められています。『イナズマロック フェス』にお客さんとして来てくれたことがきっかけで、ミュージシャンを志した沖くんと一緒のステージはやっぱり感慨深いですよね。「こんなことがあるんだな」と思いました。このステージをコチラ側の作品に丸ごと収録できたのは、Novelbright、彼のレーベル、マネージメントの本当に多くの方の協力があってこそです。本当に感謝ですし、忘れられないライブになりました。

──西川貴教名義での今後の活動についても教えてください。

西川:シングルはもちろん、これからも作品づくりは続けていきます。前回のツアーはアルバムを掲げたものでしたが、それは物理的に……30周年を迎える方がいたので(笑)時間的な制約があったなかだったのですが、楽曲も増えてきていますし、改めてまとめて届けられるようなライブのタイミングを探っているところです。ありがたいことに、それぞれ忙しくしていて。とはいえ、今日この取材が終わったら、明日はT.M.Revolutionのライブですし(笑)。行ったり来たりで、どっちの話をしているのか分からなくなるくらいですが……それは皆さんも同じかと思います、ややこしくてすみません(笑)。これからも、その“行ったり来たり”を楽しみながら、どちらも大切に続けていきたいですね。

 
[インタビュー&文・逆井マリ/写真・小川遼]

 

音楽情報

 
【発売日】2026年2月18日
【価格】
初回生産限定盤:3,300円(税込)
期間生産限定盤:1,850円(税込)
通常盤:1,500円(税込)

【収録内容】
≪初回生産限定盤≫
[DISC1|CD]
1. Ignis-イグニス-
2. Ignis-イグニス- (Instrumental)
[DISC2|Blu-ray]
イナズマロック フェス 2025
1. [ Ω ]
2. Never say Never
3. BREACH
4. HEROES
5. 響ケ喝采
6. FREEDOM
7. BEYOND THE TIME-メビウスの宇宙を越えて-
8. Energy Overflow

≪期間生産限定盤≫
[DISC1|CD]
1. Ignis-イグニス-
2. Ignis-イグニス-(TVアニメ『炎炎ノ消防隊 参ノ章』OP ver.)
[DISC2|Blu-ray]
TVアニメ『炎炎ノ消防隊 参ノ章』第2クールノンクレジットオープニングムービー

≪通常盤≫
1. Ignis-イグニス-
2. 祖逖乃誓
3. Ignis-イグニス- (Instrumental)
4. 祖逖乃誓(Instrumental)

 

 

作品情報

炎炎ノ消防隊 参ノ章

あらすじ

炎が導く灼熱のダークファンタジー
最終章始動──

「柱」を巡る激戦や〝地下(ネザー)〟調査作戦を経て、世界の大いなる秘密へと近づいたシンラたち。

彼らの奮闘に応え、他の特殊消防隊も協力する姿勢を示し、全ての特殊消防隊は大災害を阻止すべく1つになった。

今、世界を守る〝シンラ(ヒーロー)〟と消防官たちの最後の戦いが始まる。

キャスト

森羅日下部:梶原岳人
アーサー・ボイル:小林裕介
秋樽桜備:中井和哉
武久火縄:鈴村健一
茉希尾瀬:上條沙恵子
アイリス:M・A・O
環古達:悠木碧
ヴァルカン・ジョゼフ:八代拓
ヴィクトル・リヒト:阪口大助
レオナルド・バーンズ:楠大典
カリム・フラム:興津和幸
フォイェン・リィ:日野聡
オニャンゴ:宝亀克寿
グスタフ本田:土師孝也
武能登:小西克幸
亜門弾木:鳥海浩輔
蒼一郎・アーグ:チョー
パート・コ・パーン:小野大輔
オグン・モンゴメリ:古川慎
火鱗佐々木:坂田将吾
プリンセス火華:Lynn
トオル 岸理:河西健吾
火代子黄:大原さやか
アサコ・アーグ:金元寿子
新門紅丸:宮野真守
相模屋紺炉:前野智昭
ヒカゲ&ヒナタ:赤尾ひかる
象日下部:坂本真綾
アロー:内山夕実
ハウメア:釘宮理恵
カロン:安元洋貴
因果春日谷:島袋美由利
リツ:大久保瑠美
アサルト:小林親弘
ヨナ:松岡禎丞
フレイル:乃村健次
ミラージュ:千葉進歩
Dr.ジョヴァンニ:青山穣
ゴールド:日笠陽子
ドラゴン:相沢まさき
ストリーム:川田紳司
フラクチュ:松風雅也
フェアリー:三瓶由布子
烈火星宮:関智一
ジョーカー:津田健次郎
優一郎黒野:櫻井孝宏
大黒:石田彰
ナタク孫:田村睦心
ラフルス三世:島田敏
リサ 漁辺:朝井彩加
ユウ:千葉翔也
滝義尾瀬:小野友樹
スコップ:伊藤健太郎
ヤータ:速水奨
新門火鉢:大塚芳忠
万里日下部:川澄綾子

(C)大久保篤・講談社/特殊消防隊動画広報課

 

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